ひと昔前まで、近江日野周辺で普通に
使われていたちょっと変わった形の滋賀まな板ですが、
まな板としても、盛り皿としても使えるようなものにできたらなあ、と、
地元の建具屋トングウさんにス新しい滋賀まな板を作ってもらいました。
初めて近江日野を訪ねた際、
とにかく平らでひろーく広がる平野と大きな空に驚きました。
生まれ育った東京では建物が、住んだことのある神奈川や愛知には山が、
海に行かない限り目前を遮るものがあるのが当たり前。
東近江のあっちまで続く平野と、そこにどうやって生まれたのか、
ポコっとおにぎりのような山(岡?)がたまに点在する景色が新鮮でした。
そして湖!地元の人たちが「うみ」と呼ぶのが納得の琵琶湖の雄大さ。
地形も変われば品も変わる、で、このまな板の形も、
そこで切られたであろう食材もお料理も初めて目や口にするもの多さったら。
興味津々です。
魚へんに皇と書いて「鰉(ひがい)」という琵琶湖の魚。明治天皇の好物だったのでこの漢字になったそうで、今でも皇室に献上されています。
滋賀で出会った食べ物の中で、
滋賀県民でも、好き嫌い真っ二つに分かれるのが、
滋賀食の代表ともいえる「鮒寿し」です。
実は私も鮒寿司は大の苦手でした。
最初に食べたものの印象が強烈で、それ以来、遠慮していました。
ところが近江日野に引っ越して間もない頃、
近くの近江八幡に住む大学の先輩がそれを知り、
「苦手だと~?これを食べてから言え」と持って来てくれた鮒寿しを食べて以来、
大好きになりました。
好物を増やしてくれた近江八幡の柴田さん(先輩)に感謝です。
今回は、鮒寿しや湖魚の甘露煮など、
沖島で獲れた魚を加工販売する奥村佃煮の奥村吉男さんをお訪ねしました。
奥村家は、湖の中で、日本で唯一人が住んでいる島の沖島のご出身で、
近江八幡に2店舗ある「遠久邑」を経営する奥村佃煮の社長であるお父様は、
島の元漁師さんで、現在は網元をされています。
沖島在住の従業員さん「切り板(キリバン)、今でも島で使っているよ」。吉男さん「小学校の孔雀当番(!)の時、キリバンで野菜切ったの思い出すわあ」。
鮒寿しは普通、メスの子持ちのニゴロブナを使って作られるため、
オスのニゴロブナは廃棄されるものも少なくないそうです。
吉男さんは、オスのニゴロブナなど
本当は美味しいのに商品価値が低いとされている魚種の魅力を広く伝え
収益を伸ばすことによって、減り続ける湖の漁を救おうと、
新しい商品の開発に挑戦しています。
平安時代から伝わる、寿司の原点と言われている鮒寿し。
そこで吉男さんが考案したのが、
オスのニゴロブナのお腹にチーズを入れて
発酵させた「チーズ鮒寿し」づくりです。
竜王町でしぼりたての牛乳からチーズを作っている古株つや子さんのチーズと
吉男さんの鮒寿しの乳酸菌の相互作用は、
個人的な感想ですが、鮒寿しの独特の風味がまろやかを増して、
ワインや美味しいパンやイチジクや桃などと一緒に試したくなります。
鮒寿しの新しい食べ方の提案ができそうな
新商品「Yoshio Fermented Foods ~鮒寿し×チーズ」ができました。
やるなあ、吉男さん!
琵琶湖の龍馬!
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吉男さんの
「湖魚を救え!沖島の漁師だけが知っているおいしさを新商品に!」は、
2018年11月12日まで 「FAAVOしが」クラウドファンディングに参加中です。
ご支援、どうぞよろしくお願いいたします!
詳しくはこちら→ https://faavo.jp/shiga/project/3085
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2018年10月末、イギリスの南西部にある
デヴォン州ダートマスで開催される「ダートマス・フード・フェスティバル」で
吉男さんによる鮒寿しのデモンストレーションを
行っていただくことになりました。
また、同時期、
有名オーナーシェフであり、イギリスの漁業サスティナビリティを先導する
ミッチ・トンクス氏のレストラン「ザ・シーホース」内の
特別室「カンティーナ」のディナーでも
「Yoshio Fermented Foods ~鮒寿し×チーズ」を提供させていただきます。
海外での反応も追って報告させていただきます。
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突然の夜中の電話で吉男さんを紹介してくれた柴田さん、ありがとう!
もしかしたら、「これ食べてから(鮒寿し苦手と)言え!」と
ものすごい迫力で食べさせてくれた鮒寿しは、
吉男さんの作った鮒寿しだったかも。
柴田さんには足を向けて眠れません(笑)
photo: Yoshinori Yamazaki